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ダイバーシティ&インクルージョン推進機構
The Institute for Diversity & Inclusion, Hiroshima University

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ウェルビーイング推進室に所属するパウ ソクンルット特任准教授および同室長 川合紀宗教授の論文が「Top Cited Article」に選出されました

広島大学ダイバーシティ&インクルージョン推進機構ウェルビーイング推進室に所属するパウ ソクンルット特任准教授および同室長 川合紀宗教授による論文
『Pre-service teachers’ preparation for inclusive practices in Cambodia: Experience, self-efficacy and concerns about inclusion』
が、Wiley社より、『Journal of Research in Special Educational Needs』 において「Top Cited Article」に選出されました。
URL:https://nasenjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1471-3802.12715

【論文の概要】

本研究は、カンボジアにおける制度改革後の4年制教員養成課程に在籍する教員志望学生を対象として、インクルーシブ教育実践に関する自己効力感(self-efficacy)および懸念(concerns)の構造を実証的に分析したものです。
測定には、国際的に信頼性・妥当性が検証された尺度(TEIPおよびCIES)を用い、量的データに基づく分析を実施しました。
その結果、教員志望学生はインクルーシブ教育実践に対して中程度の自己効力感を有する一方で、特に以下の側面において高い懸念が認められました。

・教育資源の不足
・障害のある児童・生徒に対する社会的受容

さらに、障害のある児童・生徒との接触経験や指導経験を有する場合、これらの懸念が有意に低減するとともに、協働的実践および行動マネジメントに対する自己効力感の向上が確認されました。

【学術的意義および社会的貢献】

本研究は、カンボジアにおける教員養成分野において初となる実証的研究として、学術的に重要な位置づけを有します。
特に、インクルーシブ教育に対応可能な教員の育成においては、短期的・理論中心の講義型教育のみならず、実践的かつ継続的な現場経験を組み込んだ教育課程の設計が不可欠であることを明らかにしました。
本研究成果は、教育政策立案および教育実践の双方に対しエビデンスに基づく示唆を提供するとともに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一つであるSDG4(すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する)の達成にも資するものです。
また、本研究により提示された分析枠組みおよび知見は、教員養成改革を進める他の開発途上国においても適用可能なモデルとしての汎用性を有しています。

【現代的意義】

カンボジアをはじめとする多くの国において、インクルーシブ教育は政策理念の段階から実践への移行が求められており、本研究はその文脈において極めて重要な意義を有するものです。
本研究は、教員養成カリキュラムを実際の教育現場の状況に即して整備すること、十分な人的・物的資源を確保すること、さらに継続的な実地経験を組み込むことの重要性を示しています。
また、本論文はすでに、カンボジア国内の複数の教員養成機関において、インクルーシブ教育関連科目の必修化や教育実習の再設計に関する議論に影響を与えています。

【研究者コメント】

「現場の文脈に根ざした厳密な研究は、将来の教員養成の在り方を直接的に形づくり、ひいては社会全体の包摂性の在り方にも影響を与え得ることを示しています。 インクルーシブ教育に関する課題や懸念を理解し、それに対応するための一つひとつの取り組みが、すべての子どもが取り残されることのない教育環境の実現へとつながるものです。 今後も、分野や国境を越えた連携を通じて、エビデンスを実践へとつなげてまいります。」

— パウ ソクンルット特任准教授、川合紀宗教授

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